早く俺を、好きになれ。
「と、虎ちゃんは部屋ですか?」
玄関からそっと中を覗き見る。
リビングにいられたんじゃ、気まずすぎる。
会えるわけ……ないよね。
「ええ。あの子、夏休みに入ってから部活にも行かずにずっと部屋に閉じこもってるの。私が聞いても何も言わないし、少し心配なのよね」
無邪気な笑顔から、息子を想う母親の顔を見せるおばさん。
あれだけ大好きだったバスケをせず、部屋に閉じこもってるって……。
まだスランプから抜け出せてないの……?
あんなにバスケが大好きだったのに、サボるなんて信じられないよ。
ホントにどうしちゃったの?
キリキリと胸が痛む。
「あ、でも。咲彩ちゃんが来てくれたなら安心ね!あの子、咲彩ちゃんには心を開いてるもの」
「いえ……私は」
虎ちゃんを閉じこもらせてしまった元凶かもしれないんです。
私に心を開いてるだなんて、とんでもない。
「暑いでしょ?冷たい麦茶と水ようかんで涼みましょ」
ノリノリなおばさんに断ることができず、結局リビングに上がらせてもらうことになった。