早く俺を、好きになれ。
持っていたアイスを手土産として渡すと、おばさんは「気を遣わなくていいのに」と言いながらも嬉しそうに受け取ってくれた。
ホントに私を気に入ってくれているようで、いつでもどんな時でもおばさんは私に優しくしてくれる。
「虎も呼んで来るわね〜!」
「え……?」
お茶と水ようかんの用意がされたあと、思い立ったようにおばさんが立ち上がってリビングを出て行こうとする。
ど、どうしよう……。
会うのが気まずいだなんて、おばさんには言えないし。
考え込んでいる間にも、おばさんは階下から虎ちゃんの名前を呼んでいる。
しかも「咲彩ちゃんが来てるわよ〜!」という、余計なひとことを添えて。
だけど、私が来ていることを知ったら虎ちゃんはきっと下りてこないはず。
だから、これでよかったのかも。
テーブルの上には、虎ちゃんの分のお茶と水ようかんもセットされている。
去年の夏は、虎ちゃんや蘭と並んで食べたりしてたっけ。
庭で花火したり、スイカを食べたり、宿題をしたり。
懐かしいなぁ。
「俺、出かけるから」
「あら、そうなの?でも、せっかく咲彩ちゃんが来てるんだから、水ようかんだけでもどう?」
廊下の方からおばさんと虎ちゃんの声がする。