早く俺を、好きになれ。
ドア越しだから顔や姿は見えないけど、なんだか落ち着かなくてそわそわした。
「そんな気分じゃないからいらねー。急いでるからもう行く」
「何時に帰って来るの?」
「さぁ、わかんねー」
「あんまり遅くならないようにね」
「言われなくてもわかってるって」
面倒くさそうな虎ちゃんの声と、心配そうなおばさんの声が交互に聞こえる。
話し声はどんどん玄関の方に移動していき、ドアが開いて足音が遠ざかって行くのがわかった。
その足音は、考えなくても虎ちゃんのものだとすぐにわかる。
ドアが閉まる音とともに、私の心もズキンと痛んだ。
虎ちゃんが一度も顔を見せてくれないなんて、こんなことは初めてだ。
……わかってる。
これは、私が望んだ結果なんだ。
でも、ものすごく寂しい。
虎ちゃんと話さなくなってから心にポッカリ開いた穴は、埋まるどころかどんどん大きくなっていく。