早く俺を、好きになれ。
「咲彩、おはよう〜!」
「叶ちゃん、おはよう」
朝、案の定寝坊してギリギリの時間に登校した。
チャイムが鳴るギリギリ2分前。
蘭は寝坊した私に呆れて先に学校へ行ってしまったけど、家を出る10分前に起きて遅刻しなかったのはすごいと思う。
「市口さん、おはよう」
息を切らしながら自分の席へ向かっていると、武富君に声をかけられた。
相変わらず爽やかな笑顔。
「うん、おはよう。なんか焼けたね」
「あ〜、部活……始めたからかも」
「え……?部活?」
「うん。サッカー……やっぱり諦められなくてさ。長距離走るのは難しいけど、できないって決めつけるのはやめることにしたんだ。挑戦してみようと思って」
頬を掻きながらはにかむ武富君。
図書室で見せた寂しそうな顔は、もうどこにも見当たらない。
「そっか。頑張ってね、応援してるよ」
「サンキュ」
武富君……まだ少し胸が痛むけど。
でもね、もう大丈夫。
私は大丈夫だよ。
武富君が幸せそうでよかった。
今は心からそう思える。