早く俺を、好きになれ。
盗み聞きなんて、最低だ。
そう思うのに、どうしてもその場を離れることができなかった。
「そこまで俺を想ってくれてサンキュ。でも、今すぐには返事できない。ちょっと、考えさせてほしい」
「う、うん……!わかった。いつまでも待ってる」
「また、ちゃんと返事するから」
ズキンと鼓動が鳴った気がした。
全速力でそこから離れて校門を出る。
どうして、こんなに胸がヒリヒリするんだろう。
苦しいんだろう。
『考えさせてほしい』
それは、学校祭の時はきっぱり断っていた虎ちゃんの気持ちが前に進んでるってこと。
武富君のことでツラかった私の気持ちが前に進んだように、虎ちゃんの気持ちも確実に前に進んでいるんだ。
それは私が望んだことで、虎ちゃんの幸せを願って突き離したはずなのにーー。
なんで涙が溢れてくるんだろう。
自分勝手すぎるよね。
こんな自分がホント嫌になる。
もう笑い合える日は来ないとわかっていても、虎ちゃんと笑い合っていた日々に戻りたいって強く願ってる。
虎ちゃんのいない世界は、こんなにも色褪せていたんだって初めて気付いたよ。