早く俺を、好きになれ。


「手、かして」


「え……?」


手?


「ほら、早くしろよ」


「えっ?あ」


キョトンと首を傾げる私の手を恥ずかしそうに握った虎ちゃんは、そのまま歩き出した。


手を繋ごうってことだったんだ……?


ーードキドキ


ーードキドキ


付き合っているわけじゃないのにキスしたり、手を繋いだり。


でも不思議と嫌だとは思わなくて、むしろとても心地良くて安心する。


虎ちゃんの隣はすごく温かい。


「もうすぐ球技大会だな」


「だね。バスケ部の方はどう?」


「うーん、まぁぼちぼち。相変わらず、コジローは怒ったまま」


「そっか」


「でも、咲彩がバスケしてる俺が好きだって言ってくれたから……頑張る」


「虎ちゃん……」


照れたように笑う虎ちゃんと、ドキドキする私。


この距離感が妙に心地良い。


ずっと、虎ちゃんとこうしていられたらいいな。


そんなことをふと思った。


ここ最近、気がついたら虎ちゃんは私の視界の中にいて。


アンテナが張り巡らされているかのように、虎ちゃんがどこにいても見つけることができる。


きっと、ずっと前から……私は。


私はーー。


「ねぇ、虎ちゃん……」


「んー?」


「私、虎ちゃんのことが好き……だよ」


ドキンドキンと胸が高鳴る。


想いを伝えるって、こんなにも緊張するもんなんだ。


「うん、あー、サンキュー」


「え……なんかサラッとしてるね」


虎ちゃんは、私のことはもう好きじゃないの?


あまりにもアッサリしすぎていて不安になる。


「咲彩のは俺のとは意味がちがうだろ?」


「え……」


「ダチとしてってことだろ?」


結構勇気を振り絞って言ったのに、ちがう意味で捉えられちゃったみたい。


前にそう宣言しちゃったし……。


今回もそう思ったんだね。


結構頑張ったのに、なんだか……ショック。


心がどんより沈んで、カン違いされたまま言い直すことはしなかった。


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