早く俺を、好きになれ。
球技大会当日ーー。
朝起きた時は凍えるほどの寒さだったけど、時間が経つにつれて青空が顔を覗かせ始めた。
風がないからポカポカ暖かくて、外にいても苦にならない。
蘭との待ち合わせ場所に着いたけど、珍しくまだきていないみたいだった。
「咲彩」
「虎ちゃん……っ」
なんで、いるの?
「おはよう。蘭は?」
「先に行ってもらった」
「そうなんだ」
「行こうぜ」
虎ちゃんが歩き出したのを見て隣に並ぶ。
虎ちゃんの手はポケットに入れられたままで、この前の帰りに手を繋いでいたせいか、なんとなく寂しく思えた。
「頭、寒そうだね」
マフラーにすっぽり顎先を埋める虎ちゃんの横顔を見上げる。
五分刈りの虎ちゃんにはまだ見慣れないけど、どんな虎ちゃんでもカッコいいことに変わりはない。
見た目じゃなくて、私は虎ちゃんの中身が好きだから。