早く俺を、好きになれ。
「す、末永くん……!」
昇降口に着いたところで履き替えていると、突然聞こえた女の子の遠慮がちな声。
振り返った虎ちゃんは一瞬目を見開いたけど、次には優しく微笑んだ。
「おはよう、佐古(さこ)」
佐古さんは今までに何度か虎ちゃんに告白していた女の子。
一度目はキッパリフッてたけど、二度目は考えさせてと返事をしていた虎ちゃん。
なんだか、モヤモヤ。
「お、おはよ、う……っ。あ、あのね……話があって」
「俺も佐古と話さなきゃって思ってた。中庭行こうぜ」
「あ、うん……!」
パアッと明るくなる佐古さんの表情を見て、不安になる。
佐古さんは、まだ虎ちゃんのことが好きなんだ。
私に『ごめん』と目配せした虎ちゃんにうんと頷いてみせたけど、内心不安でたまらなかった。
虎ちゃんが……佐古さんを選んじゃったらどうしよう。
そんなの……絶対に嫌だ。