早く俺を、好きになれ。
キミだけのヒロイン
「咲彩、こっちこっち!」
「ごめーん、今行くっ!」
球技大会が始まって、クラスの子の応援に駆けずり回ること数時間。
グラウンドと体育館を結構走り回った気がする。
だけど、疲れただなんて言っているヒマはない。
いよいよ今から、体育館でバスケの決勝戦が行われる。
うちのクラスは見事に勝ち越して、次の試合に勝てば優勝だ。
席取りをしてくれていた蘭に感謝しつつ、空けてくれたスペースに腰を落とす。
「やっぱり、斎藤君とはギクシャクしたままだね」
右隣で蘭がポツリとつぶやく。
「斎藤君、相当怒ってたからね」
今度は左隣で叶ちゃんがつぶやいた。
まだ試合は始まっていないけど、コートの隅で固まっているバスケメンバーの中に斎藤君の姿は見当たらない。
どこに行っちゃったんだろう。
そう思ってキョロキョロしていると、少し離れたところで1人佇む斎藤君を見つけた。
それと同時に、応援席の片隅に佐古さんの姿を見つけてしまった。
ドクンと痛む胸。
虎ちゃんと佐古さんはどうなったんだろう。
あれからモヤモヤしてしまって、なんだか心が晴れない。
好きだから不安になるし、気になってしまう。
ねぇ虎ちゃん……私のことどう思ってる?