早く俺を、好きになれ。
「斎藤くんって案外ガンコなんだねー。お調子者っぽいのに、怒らせると怖いんだ?」
「そうだね」
蘭と叶ちゃんの会話をぼんやりしながら聞いていた。
斎藤くんは怒っている。
でも、それ以上にきっとーー。
斎藤君は虎ちゃんを親友だと思っていたからこそ、悩みを話してくれなかったことが寂しかったんだと思う。
一緒にバスケを頑張って来た親友が、急にバスケから逃げ出して……。
逃げ出す前に、なんで相談してくれなかったんだって、親友なのにって。
悲しかったんだよね。
大切に思っていたからこそ、戻ってきた虎ちゃんをそう簡単に受け入れることができないんだ。
斎藤くんの気持ちはよくわかる。
でも、仲間ならもう一度分かり合えると私は思う。
だから、頑張って……!
ーーピーッ
笛の音が辺りに響いて、バスケのコートにメンバーがぞろぞろ集まってくる。
いよいよ、今から決勝戦の始まりだ。
ちなみに……私が出たバレーは、接戦の末に準優勝というすごい結果で幕を閉じた。
練習のせいで腕にアザがたくさん出来たけど、みんなで団結して何かをやり遂げたあとの勲章って感じがするから、不思議と痛くはない。
これまで毎日みんなで練習してきたから、終わってしまうのはすごく寂しい。