早く俺を、好きになれ。
「ほら、始まるよ」
「うん」
視線をコートに集中させる。
叶ちゃんは斎藤君が気になるようで、心配そうに目で追っていた。
私も、すっかり風貌が変わってしまった虎ちゃんを見つめる。
スランプだって言ってたけど、決勝に至るまでに何本かシュートを決めていたし抜け出せたのかな。
前のような虎ちゃんに戻ったものの、バスケのことはなにも話してくれないからわからない。
斎藤君は、あからさまに虎ちゃんを避けてプレイしてるのがうかがえた。
ドキドキ、ハラハラ。
あれだけ仲が良かった2人だから、正直私もかなり心配だ。
今は佐古さんのことを気にしてる場合じゃない。
目の前の虎ちゃんに集中しなきゃ。
対戦相手は隣のクラスのバスケ部のメンバー5人。
部活では仲間同士の彼らだけど、今日は違う。
ここまでの試合では、全員がバスケ部のメンバーじゃなかったから勝つことが出来たけれど。
決勝戦を勝ち越すには、チーム一丸となって団結しないと厳しいだろう。