早く俺を、好きになれ。


虎ちゃんは斎藤君からのパスを受けようと、必死にディフェンスを交わしてフリーになるけれど。


それでも、斎藤君は頑なに虎ちゃんにパスを出さない。


ムリにシュートを打ったり、ディフェンスが張り付いている遠くの仲間にパスを出したり。


虎ちゃんを許せない気持ちはわかるけど、そんなに頑なにならなくてもいいのに。


勝ちたいっていう気持ちは同じなんだろうけど、バラバラのプレイをしてたんじゃ絶対にムリだ。


それは斎藤君もわかっているはず。


もちろん、虎ちゃんだって。


だから、パスが回って来ないことを知ってても、虎ちゃんは斎藤君に向かって手を挙げるんだ。


『もう一度みんなとバスケがしたい』


『許してほしい』


『絶対勝とう』


そんな気持ちが、虎ちゃんのプレイから伝わってきた。



頑張れ。


頑張れ、虎ちゃん。


気付くと、立ち上がって目の前の手すりを掴んでいた。


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