早く俺を、好きになれ。


人を変えるには、まず自分が変わらないとダメだ。


いつか虎ちゃんが言っていたその言葉を思い出した。


もう一度みんなの信頼を取り戻せるように、斎藤君と笑い合えるように、虎ちゃんは必死に頑張っている。



「が、頑張れー!虎ちゃん!!」



一生懸命頑張る姿に、そう叫ばずにはいられなかった。


周りの声がうるさい中、私の声が届いたのかはわからない。


だけど、遠くにいる虎ちゃんと一瞬目が合ったような気がした。


その時、虎ちゃんがフッと笑った気がしてドキドキと鼓動が高鳴った。


「が、頑張れー!」


私はやっぱりーー。


何事にも一生懸命頑張る虎ちゃんがーー


バスケをしている虎ちゃんがーー


たまらなく大好きだよ。


だから、負けないで。


きっと、斎藤くんにも伝わるから。


だから。


「虎ちゃーん、頑張ってー!」



そこからはもう、必死だった。


蘭や叶ちゃんと一緒になって、思いっきり声を張り上げたんだ。


頑張れ、頑張れって。



そしたら虎ちゃんに誰かしらからパスが回って、これまでスランプだったのがウソみたいな綺麗なスリーポイントシュートを決めた。


ーーザッ


ボールがゴールに入った瞬間、胸が熱くなって涙が頬に流れ落ちた。



「キャー!カッコ良い〜!」


「ヤバい、ヤバいよっ!」


「やっぱり末永先輩イケてる〜!」


「カッコいいー!」


「坊主最高ー!」



黄色い声援と割れんばかりの拍手が沸き起こる。


「あは、咲彩が泣いてるー!」


「ホントだ。可愛いなぁ、もう」


涙が止まらなくて、蘭と叶ちゃんにクスクス笑われた。


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