早く俺を、好きになれ。
カレーパンを食べる手と口を止めて、急に黙り込む虎ちゃん。
不思議に思って横顔に目をやると、なぜか真剣な目で虎ちゃんは私を見てきた。
「じゃあ、彼女になれば?」
ん?
え?
今、聞き捨てならない単語が聞こえた気が。
聞き間違い?
うん、きっとそう。
「えーっと、もう1回お願いします」
「だから……!俺の彼女になれば?っつったんだよ」
虎ちゃんは若干投げやりになりながら、恥ずかしいのか顔をプイと背けて向こうを向いてしまった。
え。
「…………」
えーっと。
うん、アレだ。
これはいつもの冗談ってやつだ。
そうに決まってる。
「あはっ、冗談キツいよー!熱でもあるんじゃない?」
笑えない冗談だけど、とりあえず笑い飛ばしてみた。
もしかしたら、ホントに熱があるのかもしれない。
だって、こんなことを言うなんておかしいもん。
そっぽを向く虎ちゃんにそっと手を伸ばして、おデコを触ってみた。
その瞬間虎ちゃんの背筋がピンッと伸びて、反動でこっちを向いた大きなその目が見開かれる。
前髪の隙間から覗く綺麗な瞳と近距離で視線が重なった。
顔が赤いような気はするけど……。
うん、熱はないみたい。
「お前なぁ。俺が冗談でんなこと言うと思ってんの?」
なぜか責められるような目で見つめられて、思わずゴクリと唾を呑み込む。
至近距離にいるせいか、なんかドキッとしちゃったし。
「うん。だって……虎ちゃんだもん」
冗談じゃなきゃ、困るよ。