早く俺を、好きになれ。
お菓子作るの上手だもんね。
武富くん、甘い物が好きだし。
毎回渡しているに決まってるよね。
「市口さん」
「へっ?」
「どうしたの?手が止まってるよ」
やば、ボーッとしちゃってた。
「あ、いや、えっと。なんでもないよ。お、織田さんって、お菓子作るのが好きなの?」
取り繕うように笑って、止まっていた手を動かした。
いけないいけない。
ちゃんとしなきゃ。
「あー、うん。甘い物が好きな幼なじみがいて、小さい頃からお母さんと一緒に良く作ってたんだ」
織田さんは、今までに見せたことがないような顔で優しく笑った。
その人のことをホントに大切に想っているのがわかって、胸が苦しくなる。
幼なじみ……。
そんなの、決まってる。
ひとりしかいないじゃん。
直感でそれが武富君だってことがわかった。
はははっ。
私、最初から勝ち目なんてないじゃん。
幼なじみとの恋って、ありがちな展開。
長い間お互いのことを想い合って、関係が壊れるのが怖くて告白出来ずにいた。
だけど、何かのきっかけで想いが通じ合って2人は付き合い出した。
そんなところかな。
うん、思いっきりベタな展開だね。