早く俺を、好きになれ。


2人は両想いなんだ。


当たり前だよ、付き合ってるんだもん。


彼氏、彼女なんだよね……。


ズキッと痛む胸。


ズキズキ疼いて、痛みがどんどん広がって行く。


胸が……苦しいよ。


織田さんの幸せそうにはにかむ顔を見ていたら、武富くんの幸せそうな顔まで浮かんで。


2人が想い合っているということを、改めて突きつけられた。


作業に没頭しようと試みたけど、身が入らなくて余計なことばかり頭に浮かぶ。


織田さんは武富くんと一緒に帰る約束をしてるの?


帰宅部の武富君は、織田さんが終わるのをどこかで待ってるのかな。


2人が並んで歩いている姿を想像すると、胸が張り裂けそうになった。


ダメダメ。


えーい、消えろ雑念!!


何も考えるな。


無になれ、私。



「大丈夫?体調悪いの?さっきから何度も手が止まってるけど」



私の顔を心配そうに覗き込む織田さん。



「う、ううん!ごめんね、何でもないから」



私は慌てて否定した。



「そう?何かあったら遠慮なく言ってね」



織田さんはやっぱり優しくて、私にニッコリ微笑んでくれた。


「ありがとう……」


複雑な気持ちで織田さんに笑顔を返す。


だけど少しだけ頬が引きつってしまった。


敵いっこないよ、織田さんには。


これじゃ武富くんが好きになるのもムリはない。


可愛くて優しくて。


私なんかとは大違いなんだもん。


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