早く俺を、好きになれ。
当たり前の感情、か。
そんな風に考えたこともなかったな。
「もっと早くに彼女がいるって知ってたら、こんなにも苦しまずにすんだのかな」
「それは咲彩の気持ち次第でしょ」
私の気持ち次第?
もっと早い段階で彼女がいるって知ったら、簡単に諦めることが出来た?
好きでいるのをやめることができた?
答えはきっとノー。
私はきっと諦められなかったと思う。
好きになった時点でそれはムリだった。
「これはあたしの個人的な意見なんだけど」
スカートの上に乗せていた拳を、蘭が力強く握って来た。
そこからは、力強い蘭の決意のようなものが伝わって来る。
「告白しなよ、武富君に」
見上げた蘭の瞳は今までにないほど真剣でまっすぐで。
だからこそ、私は何も言えずに黙り込んだ。
今までにも散々言われて来たから、そう言われるってことは何となくわかってた。
理由をつけて曖昧に交わして来たけど、今回ばかりは逃げるわけにはいかない。
でもね……ムリだよ。
「さっきも言ったけど、咲彩が本気で好きだってことを知ってるから後悔して欲しくないの。このままじゃズルズル引きずるだけだよ」