上司、拾いました
佐伯と昼食を終えた後、東間ははたと三樹から指定されたケーキ屋の営業時間が気になった。
三樹自身はいつでも構わないと言っていたが、先延ばしにするというのも気持ち悪く感じる。
できるならば今日中に借りを返してしまいたいほどだ。
しかし、ケーキ屋などそう遅くまで開いているものではないだろう。
そう考えて事前に調べた結果、駅前のパレットというケーキ屋は午後七時までの営業だということが判明した。
「――悪い、佐伯」
普段ならば日付が変わろうとも留まる職場だが、仕方がない。
昨日も所用で早めに退勤してしまった手前、苦渋の決断ではあったが、午後六時半には職場を立ち去ることにした。
「さっきも言ったが、外せない用がある。続きは明日に回そう」
あからさまに渋々といった様子で言う東間に、佐伯は愛想よく「わかりました」と頷いた。
それから互いにデスクの上を片づけていると、佐伯がにこやかに言う。
「でも今日の東間さん、本当におかしかったですね」
「は?」
とても上司に言うとは思えない言葉に思わず聞き返した。
「あの東間主任が寝坊したり、部下の関係に興味を持ったり、夕方に退勤したり……明日は雹でも降るんじゃないですか?」
「お前は俺をどんな人間だと思ってるんだ?」
軽口を言うように笑う佐伯だったが、これ以上突っ込まれると厄介だ。
東間は早々と支度を終え、もう完全に日の落ちてしまった窓を眺めつつ「お疲れ」とだけ言ってオフィス内を立ち去った。
三樹自身はいつでも構わないと言っていたが、先延ばしにするというのも気持ち悪く感じる。
できるならば今日中に借りを返してしまいたいほどだ。
しかし、ケーキ屋などそう遅くまで開いているものではないだろう。
そう考えて事前に調べた結果、駅前のパレットというケーキ屋は午後七時までの営業だということが判明した。
「――悪い、佐伯」
普段ならば日付が変わろうとも留まる職場だが、仕方がない。
昨日も所用で早めに退勤してしまった手前、苦渋の決断ではあったが、午後六時半には職場を立ち去ることにした。
「さっきも言ったが、外せない用がある。続きは明日に回そう」
あからさまに渋々といった様子で言う東間に、佐伯は愛想よく「わかりました」と頷いた。
それから互いにデスクの上を片づけていると、佐伯がにこやかに言う。
「でも今日の東間さん、本当におかしかったですね」
「は?」
とても上司に言うとは思えない言葉に思わず聞き返した。
「あの東間主任が寝坊したり、部下の関係に興味を持ったり、夕方に退勤したり……明日は雹でも降るんじゃないですか?」
「お前は俺をどんな人間だと思ってるんだ?」
軽口を言うように笑う佐伯だったが、これ以上突っ込まれると厄介だ。
東間は早々と支度を終え、もう完全に日の落ちてしまった窓を眺めつつ「お疲れ」とだけ言ってオフィス内を立ち去った。