上司、拾いました
「二日酔いとか、大丈夫ですか?」
「…………まったく、大丈夫じゃない」


 一瞬『大丈夫だ』と言いたげにした東間さんだが、取り繕える段階ではないと判断したのか素直に、けれども気まずそうに呟いた。

 あれだけ酔っていれば、それはそうなるだろう。

 私はお酒に本当に弱いので普段は絶対に呑まないのだが、一滴でも飲むと翌日が大変なことになる。

 だから、その時の対応策はいくつか知っていた。


「二日酔いに効くもの持ってきますから、顔でも洗って来てください」


 そう言いながら立ち上がると、その人は「悪い……」と低く呟いて、額を押さえながらふらふらと立ち上がる。

 また転ばないといいけれど。

 そんなことを思いながら、私はカウンターの向こう側に在る台所へ向かった。

 その最中にガンッとなにかにぶつかるような音が聞こえて、湿布の用意も必要かなと思ったりもした。
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