僕の(わたしの)生きる世界1[完]
ミハイルがそれを見て、内心苛立っていたが、それを出すことも出来ず目を反らした。

「ジェイク…。ごめんなさい。ありがとう。」

ステラがジェイクの握った手に、空いている左手を重ねる。

「わたしは、行かなければいけないの。これが、転生したわたしの運命だから。お兄様や、皆を頼むわね?わたしが戻って来なかったら…。ジェイクが総帝になって」


「戻って?…僕はオフワンの領主だ。総帝には、なれない。僕は、君に幸せになって欲しいんだ。だから、ミハイル様!ステラが大事なら守って!?」

てっきりステラを抱き締めて、愛を囁くのかと思っていたのに…。

最後になるかもしれない時くらい、許そうかと思っていたのに。

ジェイクは、そうはしなかった。

ジェイクは、ミハイルの気持ちなんて知ってるんだとばかりの表情で、懇願していた。

「分かりました。教え子を守るのも、教師の務めですから。行きましょう。」

ステラは、ジェイクの手を放しミハイルと転移していった。

ジェイクは、その場で座り込んだ。

「ジェイク…。お前、ステラを本当に愛してるんだな?」

「あぁ。振られちゃってるけどね?」

「ミハイル様だよな?」

「僕は、ずるい。ミハイル様は、この戦いが終われば、天界に帰る。そうしたら、ステラが僕の事を見てくれるんじゃないかと考えてた。」

「そうか…。戦いの覚悟だけでなく、ミハイル様が居なくなる覚悟までステラはしているってことか」

「うん。僕はステラを手に入れたかったんだ。でも、それは無理だと二人を見て思った。だから、ミハイル様が天界に帰らなくても良い方法が無いのかと、いろいろ探ってみたんだけど…。」

「え?そんなことしてたのか?」

「ポーロにも、ため息つかれたけどね」

自分の愛する息子が、愛する者の為とは言え、ライバルについて奔走している姿は、ポーロもさぞ辛いだろう。

「その方法は見つかったのか?」

ジェイクは首を横に振った。

「召喚契約しか…。でも、ミハイル様のような上位の天使を召喚契約するなんて、無理だもの…。」

「あぁ そうだろうな。」

「タケル。皆に戦いの準備の連絡しないと。敵は、ステラ達に刺激されて街まで来ないとは言い切れないから」

ジェイクの表情が、変わった。

「お?なんか、久しぶりにその雰囲気じゃないか?」

「僕は、元総帝だよ?」

「あぁ ジェイクが戦いのプロなのは知ってるさ!」

そして急遽、領主と帝達が集められた。
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