WOLF-孤独のその先-
だから別に私はさっきケイの言ったことなんて気にしてないのに。
目の前のキョウヤはいつもの鋭いグレーの瞳よりも少し力なく見えた。
「私の名前、清宮ナオ」
「…………」
「AB型の17歳、高2」
「…………」
「父親はいない、母と二人暮らし、家はここから歩いて10分くらいだと思う」
普段話さない私がこんなに話している事に驚いているのか、はたまたいきなり何を言い出したのかと驚いているのか
キョウヤの表情はさっきとは違い少し驚いているように見える。
「趣味は…特にない」
「…………」
こうやって話していると自分って本当になんの取り柄もない凡人なんだなと思う。
ここまで特に話す事がないとは自分でも驚きだ。
「別に騙されたなんて思ってない」
「…………」
「私はキョウヤの事を何にも知らない」
正直キョウヤがヤクザだったって事には驚いた。
けど、
「だから…これから知っていけばいい」
私がこんな事を思う日が来るなんて思ってもなかった。
「これからキョウヤが私に、キョウヤの事を教えてくれればそれでいい」
こんな事を言う日が来るなんて思ってもみなかった。