WOLF-孤独のその先-



キョウヤにとっての誕生日とは、一体どんな存在なんだろう。



私にとっての誕生日、それはあまりに孤独で思い出の一つもないそんな一日だ。



4月10日、それは世間で言う私の誕生日という日。




特に何も思い出す事もないのだけれど、あえて思い出すと言えば学校から帰るとその日だけはいつもよりも多く机に置いてあるお金。




きっとこれが母から私への誕生日なんだと思う。




忘れられてないだけいい…今ならそう思える。




だけど小学生の時の私にはそれがとても悲しく辛い出来事だった。




クラスの皆んなは好きなものを買ってもらっただとか、一緒にプレゼントを買いに行っただとかよくそんな事を聞いていたから…



ただ机に置かれただけの大金



一度でいいからそばにいて欲しかった。ケーキを一緒に食べるだけでもいいから帰ってきて欲しかった。




今思えばなんて事ないことなのかもしれない…だけどそのときの私は辛くて悲しくて。ただ一人そのお金を握りしめて寝たのを今でも鮮明に覚えている




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