WOLF-孤独のその先-
あの時キョウヤが私に言ってくれたように。
「キョウヤ言ってくれたの、何かあったら俺を呼べって。何があってもお前の所に行くって」
「そうだったんだね…」
「だから私も返したい」
あんな顔をするキョウヤに
あの時私の心を暖かくしてくれたキョウヤに
「誕生日おめでとうって」
静かに話す私に、チヒロさんは私の頭をポンっと一度撫でると
「キョウヤは幸せ者だな、ナオちゃんに出会えて」
そう言ったチヒロさんの声はどこか辛そうにも聞こえて
「ありがとう、ナオちゃん」
この時小さく笑うチヒロさんの言葉の意味を、私はまだちゃんと分かっていなかったのかもしれない…