WOLF-孤独のその先-
「チヒロ、ナオを頼む」
そう呟いたキョウヤに、何処からともなく現れたチヒロさんが駆け寄ってくる。
「おい、落ち着けよ。お怒りはごもっともだけどお前がヤったらコイツら全員死ぬぞ」
そんなチヒロさんの冗談なんだか本気なんだか分からない言葉を聞きながら、ゆっくりとキョウヤに下された私の身体。
「あぁ、だから何だ」
それは私にさっき話しかけてくれた時の声とは違い、まるで熱を通さないそんな声。
「さすがに殺るのはマズイだろ」
「跡形もなく消せば問題ねェ」
そんな恐ろしい事を言いながら一歩前にへと歩みだしたキョウヤ。
もう私に見向きもしないその瞳は以前見たキョウヤのようで…
私は歩き出したキョウヤの背中に思い切り抱きついた。