WOLF-孤独のその先-
「今日ナオちゃんを迎えに来たのには理由があるんだ」
車が発車してからしばらく、そう話し出したのは助手席に座るチヒロさん。
「2日前頭が目を覚ました。そして今日帰ってくるんだ。ケイゴに聞いた話、普通に行ってもきっとキョウヤは会ってくれないと思う…でも今日その婚約者とキョウヤは頭のお見舞いに来る事になってる。そこを狙ってキョウヤに会おう」
普通には会ってくれない…確かにチヒロさんの言う通りだ。
きっとキョウヤは普通に会いに行ったんじゃ私を避けて会ってはくれない。
「如月組の中に入ったらどうなるか分からない、俺達ですらそんな勝手な行動をしたらキョウヤの側近護衛達に止められる可能性がある。でもキョウヤは今婚約者を迎えに行っているはずだ。そこで如月組に着いて降りて来た瞬間を狙う」
チヒロさんやケイゴでさえ止められてしまうかもしれないのに…私なんかが行っても大丈夫なんだろうか。
でも、それでも行かないと…
「婚約者の名前は天野みちる、隣県で最も大きいと言われてる天野組の娘だ。この見合いは天野組からの申し出らしい。噂によると昔総会で会った時にキョウヤを気に入ったんだとか…それから何度も見合いの話を持ち出して来てたみたい」
「……そうだったんですね」
「でもそれをずっと頭が断ってたんだ。頭はキョウヤを大事に思ってるからね、お見合いをさせる気は無かった。それが倒れた途端華月グループのトップが婚約の話を受け入れたんだ。組織を拡大するために」
思っていたよりもずっと複雑で沢山の事が絡み合ってる。
だけど私のやる事は1つだけだ。
キョウヤに思いを伝える。
それもしないで悩んでた事自体がそもそもの間違えだったんだから。