WOLF-孤独のその先-
「そろそろ着くぞ」
隣に座るケイゴにそう言われ、思わず緊張で震えた手をギュッと握りしめる。
そしてそれに気が付いたケイゴがフッと笑った。
「俺がこの前言った事覚えてるか」
それはきっとケイゴのお父さんと話をする前の出来事。
「キョウヤを信じる…」
ケイゴに言われた「キョウヤをもっと信じろ」という言葉。
「そうだ」
「覚えてんじゃねェか」と言いながら頭をグリグリと撫でられたせいで、髪の毛がボサボサになる。
「何があっても大丈夫だ。俺とチヒロがサポートする、絶対にお前をキョウの元に届けてやる」
「…うん」
「だから、だからキョウを信じろ。俺達を信じろ。そして何より…自分を信じろ」
ケイゴの言葉はやっぱりいつも胸に響く。
何にも考えてなさそうで、誰よりもバカでうるさいのに。
ケイゴの言葉はいつも心にドンッとパワーを入れてくれる。
「よし、行こう」
停車した車。その少し前には大きな門が見える。
そこに横付けされた車に向かって、私は大きく走り出した。