WOLF-孤独のその先-
後部座席からはいつものスーツ姿のキョウヤが出てきて、そして振り返りまるでエスコートするようにあの女性に手を差し伸べる。
それを見た途端ズキンッと胸が痛んだ。
キョウヤはまだこっちに気が付いてない。
私は一歩踏み出すと
「キョウヤ!!」
大きく叫んだ。
もちろんその背中はピクリと反応する。
それなのにこちらを振り向く事はなくて…一瞬心が折れそうになる。
ダメだ、こんな事で落ち込んだら。
「キョウヤ待って!話を聞いて!!」
そんな私の叫び声に周りの護衛達が反応し、そして天野みちるがこちらへ振り向く。
「キョウヤ様…あの方お知り合いですの?」
私を見ながら可愛げに首を傾げキョウヤの服を掴む。
やめて、触らないで。
キョウヤに触れないで。
そう叫びたいのに…キョウヤはこっちを見るどころか
「何でもありません。天野さん行きましょう」
まるで私を無視するみたいに歩みを進める。