WOLF-孤独のその先-
頭と呼ばれだ男性は、キョウヤの前まで歩いて来ると再び口を開く。
「そうか。しかし女の子が泣いていて、うちの者二人が何故か取り押さえられている。これのどこが何でもないと言うんだ?」
まるでキョウヤに聞き返すように私を見て、ケイゴとチヒロさんを見て…そしてまたキョウヤを見た。
それに対してダンマリなキョウヤは、きっと私を今すぐここから追い出そうとする事なんて容易い。でもそれをしないのは…きっとまだ私に望みがあるからと思っても良いんだろうか…
「まぁ良い、大体の話はケイジロウから聞いた」そう言い隣にいるケイゴのお父さんを一瞬だけ視界に入れる。
「君は、キョウヤの恋人だね」
いきなりのそんな声かけに、まさか私に話しかけて来るなんて思ってなかったもんだから思わずビクっと肩を揺らす。
「あ…えっと…」
恋人…私とキョウヤはまだ恋人なんだろうか?私はまだ承諾してないにせよ、キョウヤには別れを告げられそして婚約者がいる。
もしかして…今すぐ出て行けとか、キョウヤに近寄るなとか言われるの…?
でも、次に返ってきた言葉は思っていたモノとはかなり違っていて、私を赤面させた。
「さっきの熱い言葉胸にグッときたよ。キョウヤを大事に思ってくれているんだね。ありがとう」
き…聞かれてたの…
「こんな環境のせいでキョウヤには沢山の苦労をかけてる。いつもどこか冷静で冷めた顔ばかりさせていた。だから…あんなにも自分を出すキョウヤを初めてみたよ。」
私を見つめ目尻を下げるその表情はとても嬉しそうで、ヤクザの組長とはこんなに優しいものなのかと驚く。
「最近キョウヤの様子が柔らかくなったのは、きっと君のおかげだね」