WOLF-孤独のその先-
「君はキョウヤが好きかい?」
そう真剣な眼差しで聞かれ私は拳を握りしめた。
「はい、好きです。この先何があってもずっとずっと大切な人です」
この先何があっても。
私はずっとキョウヤが好きだ。
私の言葉に「そうか」と優しい笑顔を向けると「ありがとう」と言って再びキョウヤを見つめる。
「それにしても私が倒れている間に、随分と色々な事が起きたみたいだな。」
語られるようにゆっくりと話すその姿は、怖くないはずなのにどこかもの凄い独特な雰囲気を醸し出していて
「天野組との婚約話しは確かに前々から申し出があった。しかしそれは確か保留にしていたはずだが。キョウヤ自身にその気が無いなら断ろうとさえ思っていた。そちらにもそう返答したはずだったが、違うかい?天野組のお嬢さん」
組長の視線がキョウヤの少し後ろにいる天野みちるに向けられ、天野みちるの身体が小さく揺れる。
どういう事…?
「私が倒れた途端、婚約しない場合にはうちとの縁を切るなんて話を持ち出して来たそうじゃないか。この話、君の父上は承諾しているのかね?」
「え、あ……」
天野みちるに向けられるその視線はとても冷たく残酷で、やっぱりこの人はヤクザの長なんだと思い知らされる。
「まったく、うちをナメてもらっちゃ困る。キョウヤは私の大切な存在なんだ。本当の息子のように思ってる。そんな大切な息子に強制的な婚約などさせるつもりは無い。それを私が不在のうちに話を進めようとするなんて、覚悟はできているのかな」
その言葉がすごくグッと胸にきた。
それはキョウヤも同じようで真っ直ぐに組長を見つめている。
キョウヤはその眼差しのまま組長に一歩近づくと
「しかし、この婚約は華月グループ拡大に合わせた婚約なのではないのですか」