主任は私を逃がさない
今回はなんとか私が勝利をおさめたけれど、このことが親にバレたら大変なことになる。
監禁どころじゃ済まない。松本さんじゃなくて私の方が困る事態になってしまう。
警察や裁判なんか、まだマシな事態なのよ。
でも“アレ”だけは回避したい! なんとしてでも“アレ”だけは!
「私としては陽菜の両親に全部ブチまけて、そのクズカス男に制裁を加えてやりたいけど」
「友恵、お願いだから親には黙ってて!」
「分かってる。死ぬほどムカつくけど我慢するわ。陽菜が恋人探しに焦る事情も知ってるし」
“アレ”の事情を知ってる友恵が渋々ながら納得してくれた。
私が簡単に騙されたのは、男に免疫がないのは勿論のこと、友恵の言う通り焦っていたせいもある。
私にはどうしても恋人が必要だったんだ。
だから松本さんが現れた時、これはもう運命だと思ったの。
「私を窮地から救い出してくれる、白馬に跨った王子様だと信じてたのに」
「白馬に乗った王子様じゃなくて、ジープに乗った密猟ハンターだったのね」
「奪われちゃった……。この世でたったひとつの私の宝物、奪われちゃった……」
再び両目に涙がじわりと盛り上がる。
きっと男の松本さんには分からない。
自分のしたことが、どんなにヒドイことなのか。