主任は私を逃がさない
ケーキで乾杯
「いやー、見たかったわその場面。呼んでくれたらスッ飛んで行ったのに」
ケーキの刺さったフォークを口に運びながら、友恵が上機嫌でケタケタ笑っている。
私も同じようにケーキを頬張りながらニンマリと笑った。
飲み会から明けて、今日は土曜日。
お互いに会社が休みの私達は、いつも通り私の部屋で女同士のおしゃべりに興じていた。
話題はもちろん、松本成敗物語。
友恵が買ってきてくれたホールケーキを頬張り、気楽であけっぴろげなティータイムを楽しんでいる。
フルーツの盛り合わせデコケーキも捨てがたいけど、やっぱりイチゴデコよね。
切り分けなんてお行儀の良い事はせず、直接フォークをブスブス突き刺して崩すように食べるのがミソだ。
「でも陽菜、よく反撃できたわね? 恥の上塗りは耐えられない~とか言って泣いてたのに」
「だって恥ずべきなのは私じゃなくて松本さんだもの」
「あっちの会社で噂になるかもよ? いいの?」
「噂になるとしたら、捨てられた哀れな女としてじゃなく反撃したアッパレな女としてでしょ? 望むところよ」
「やだもう陽菜ちゃんたら、おっとこ前で惚れちゃいそう」
私達は声を揃えて、けたたましく笑った。