主任は私を逃がさない

 友恵は親身に相談に乗ってくれて、サロンや買い物にも付き合ってくれて、アドバイスもしてくれた。

 なのに何だか、ムダに振り回してしまったような気がする。


「いいわよ、そんなの」

「ごめんね。でも友恵には本心から感謝してるのよ? ほんとよ?」

「だからいいってべつに。あたしも結構楽しんだし。あ、でも服とかコスメ用品とか、陽菜がいらないんだったら全部タダで譲って。今回の講習料ってことで」

「…………」


 私は人からの借り物じゃなく自分自身でありたい。

 私は私でいいんだって信じたい。


 松本さんに騙されてしまうような情けない私だけど。

 それでも昨日の私は、ただ泣き寝入りしているだけの私ではなかった。

 なら、私は私のままでいいんじゃないかな?

 痛い目に遭ったって、泣きをみたって、前に進んで行けるのなら。

 だから……。


「私ね、史郎くんに言うつもり。好きですって」

「……やっぱり?」

「うん」

「いいの? また傷付くことになるかもよ? だって史郎くんは……」

「うん。私の事を好きじゃないかもしれない。でもね、私は痛い目に遭っても、泣きをみても、ちゃんと前に進めるんだよね」

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