主任は私を逃がさない
「やっとの事で手に入れたんだ。なにがあっても俺はお前を永遠に逃がさない。覚悟しとけよ?」
思っていた通りのことを言われて、思わず笑ってしまった。
聞きようによってはサイコスリラー映画みたいな、最高に恐ろしいセリフなのに。
「こんなに幸せだなんて不思議ね」
「俺の愛の力だよ」
「ねえ史郎くん、実は私まだ言ってないことがあるの」
「なんだ? もう俺は怖いモンなしだからな。何でも遠慮なく言って大丈夫だ」
「私、史郎くんが好き。幼なじみのお兄さんとしてでも、頼れる上司としてでもなく、ひとりの男性として恋してる」
「…………」
「私の初恋を史郎くんに捧げるよ」
「俺もだよ。陽菜が俺の初恋で、初めての恋人で、そして最後の恋人だ」
薔薇の花束を挟んだ私達は、薔薇の花のように頬を染めて微笑み合う。
そしてそっと唇を寄せて、かぐわしい芳香に包まれながらキスを交わす。
子どもの頃のようにお互いの手を取り合いながら、私達は初めての道を未来へ向かって進んで行くんだ。
そしてそれは、この上なく幸せなことなのだと私は実感していた。
【END】