主任は私を逃がさない
『まずは手っ取り早く外見から変えようね。そうすれば自動的に意識も変革していくものよ』
変身の指南役を買って出てくれた友恵は、涙も冷めやらぬ私を外へ連れ出し、自分愛用のヘアサロンに飛び込んだ。
「陽菜、髪染めようね。もっと明るい色がいいわ」
「え? でも私、黒髪が好きなんだけど」
「だめだめ。せっかく変わるって決めたんなら思い切り変わらなきゃ」
そうして私は生まれて初めて髪を染め、パーマなんて大冒険まで体験してしまった。
髪の毛がこんなにウネッてる姿なんて、寝グセの時以外見たことない。
鏡を映る自分の姿に戸惑う私の手を引っ張り、友恵は意気揚々とショッピングに繰り出した。
そして新しい服をたくさん選んでくれたんだけれど、これがまた明るい色で大胆なデザインばかり。
「このフレアミニ、可愛いわね。このチェックのストール素敵。あ、この小花柄のワンピース欲しい! あのパンプスも買っちゃおう!」
「ねえ、どれも派手すぎない? 私がそんなハイヒール履いたら転んで捻挫しそう」
「だって陽菜に任せてたら、弔問服ばっかり選ぶじゃないの」
「弔問……」
「変わるって決めたんでしょ? 黙って私について来なさい」