主任は私を逃がさない
それでもスパルタ指導のおかげで、短期間でなんとか友恵先生の合格点をもらえるまでに成長できた。
会社の皆の反応から見ても、まずまずの出来ばえなんじゃないかと思う。
お世辞は入っているのだろうけれど、「可愛い」「よく似合う」と連発で称賛されて、私は喜ぶよりもホッと胸を撫で下ろした。
良かった。あれだけ大金をつぎ込んでおいて、オカメインコじゃやっていられない。
コスメや洋服や、靴やランジェリー、なぜかパジャマやスリッパに至るまで友恵に大量購入させられて、私の通帳残高は一気にスカスカになってしまった。
クローゼットや化粧ポーチの中はギッチギチだけど。
それはともかく、やっと今日から新しい生活が始まる。
昨日までの自分とは生まれ変わった、充実した新しい人生のスタートだ!
改めて気合いを込めたところで就業開始の音楽が鳴り、私は颯爽と自分の席について受け持ちの事務作業を始めた。
この春に入社したばかりで、まだまだ新米の私に任せられている仕事は単純な雑用が主。
ところが……。
「中山さん、メーカーに注文書送ってくれた?」
「あ、まだです。すみません」
「中山さん、ファイルボックスに新製品のパンフが見当たらないんだけど」
「あ、すみません。まだ差し替えてませんでした」
「中山さん、今日〆切の顧客請求額、そろそろ計算してくれた?」
「あ……」
「中山さん、納品した商品のロットナンバーが記載されてないんだけど」
「…………」