主任は私を逃がさない
お、おかしい。今日は朝からミスの大量生産だ。
まるでワンテンポ遅れた集合ダンスのように、自分だけが仕事のリズムに乗り切れなくてオロオロする。
周囲に迷惑をかけている申し訳なさで焦るせいで、ミスが新たなミスを呼ぶ。
……何かが違う。せっかく新しい自分になったはずなのに、何かが空回りしている気がする。
「中山」
「は、はい。何ですか主任」
「朝いちで頼んでおいた各支店へのファックスはどうした? 確認の電話が入ってきてるぞ?」
「あ!」
しまった! 連発するミスの対応に気を取られて忘れてた!
「す、すみません! 今すぐ送りますから!」
用紙を引っ掴んでバタバタとファックスに駆け寄り、送信の操作を始めた私の背後に不穏な影が忍び寄る。
振り返らなくても、それが誰なのか手に取るようにわかった。
「中山」
「は、はい」
「それが終わったら、二階の小会議室までちょっと来い」
「……はい。主任」