主任は私を逃がさない
そして、ラッキーはラッキーを引き寄せる。
顔が良いだけじゃなく、この人は生まれつき頭もキレる。
目の付けどころが普通と比べて斜め横というか、常に多角的な視点で物事をとらえることが出来る人。
言い換えればへそ曲がりとも言えるけど。
営業実績もあるし、対人スキルも高いし、まだ二十代の半ばで主任に抜擢されたのも納得だ。
でも本人はこの昇格は自分の実力というよりも、可愛がってくれている上役の後押しのお蔭だと思っているらしい。
そんな謙虚な姿勢も好感がもてて、当然、女子社員にも非常にモテる。
この人が私の直属の上司、西田 史郎(にしだ しろう)。
……私にとって要注意人物だ。
「座れ」
無愛想に言われて、主任と机を挟んで向か合って座った。
アゴをぐっと引いて視線を下げた私に、不機嫌な男の声が容赦なく浴びせられる。
「さあ、どういうことか説明しろ」
「……どういうって、何がですか?」
「とぼけるな。何を聞かれているかぐらいわかっているんだろ?」
「なんのことかわかりません」
「お前、その変わり様はなんだ? 仕事も朝からミスばかりだし、いったい何があったんだ」
「仕事でご迷惑をかけたのは謝ります。でもプライベートなことについては、お答えする義務はありません」