主任は私を逃がさない

 ―― カシャ……。

 おもむろに史郎くんが胸ポケットからスマホを取り出し、私を撮影した。

 そしてキョトンとしている私に平然と告げる。


「この写真をお前のご両親に送る」

「な……!?」

「さぞ驚くだろうな。別人みたいになった陽菜の姿を見たら、腰抜かして飛んで来るだろ」

「ちょっとやめてよ! 大騒ぎになっちゃうじゃない!」

「それが嫌なら俺に、なにもかも正直に話せ。なにがあったんだ?」

「…………」

「送信、っと」

「わー! 待って待ってお願い! 話すからそれだけはヤメて!」


 私は仕方なく、松本さんとの関係をポツポツと白状した。

 自分の惨めな初体験を、兄同然な彼に話すなんて死ぬほど恥ずかしい。

 でも適当なごまかしは史郎くんには絶対通用しない。

 カンが鋭いうえに、なにせ物心つく頃からの付き合いだ。

 どんなにうまく嘘をついても、彼はいつも私の目の動きひとつで簡単に見破ってしまう。

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