主任は私を逃がさない

「済まない陽菜。そんなケダモノからお前を守ってやれなかった俺を、どうか思う存分責めてくれ」


 いや、責めてくれって言われても、そもそもあなたに全然関係ない話なんですけど。

 でも良かった。とにかく冷静さは取り戻してもらえたみたい。

 これで何とか、うちの両親にバラされる最悪の事態だけは免れ……


「陽菜、聞いてくれ。今すぐご両親に連絡しよう」

「史郎くん、私の話ちゃんと聞いてた!?」

「俺達、結婚しよう」

「……は!?」


 史郎くんは見たこともないような真剣な目で私を見下ろしている。

 そして私の肩に乗せた手にギュッと力を込めた。


「俺、ちゃんと責任を取るよ」

「だから、何の責任!? 史郎くんのどの辺に今回の責任があるの!?」

「ご両親には、お前の初めては俺が奪ったことにすればいい。大丈夫、望むところだ」

「それ、私ぜんぜん望んでない方向なんですけど!」

「心配するな。俺はこんな事で婚約を破棄するような器の小さい男じゃない」


 まだそんなこと言ってるの!? どんだけ忠犬!?

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