主任は私を逃がさない
「やっぱり妬けるな。これから陽菜ちゃんが出会って恋をする男達に」
「…………」
え? と、私は心の中で小首を傾げた。
なんだか今、意味がよく分からない言葉を言われた気がする。
「陽菜ちゃんはこれからいっぱい恋をして、いい男を捕まえて結婚して、可愛い奥さんになるんだ」
「…………」
「俺、キミには幸せになって欲しい」
理解できないセリフが次々と、彼の口から飛び出てくる。
幸せになって欲しいって……。
それはこれから、あなたが幸せにしてくれるんでしょう?
あ、いや、ふたりで幸せの種を大事に育てていくのよね? だって私達は真の恋人同士になったんだもの。
そうなのよね? そうなんでしょう?
…………。
違う、の? そうじゃないの?
「陽菜ちゃんが大人の女性になる手伝いができて、すごく光栄だった。ありがとう」
そんな感謝の言葉を述べられても、思考が追い付かない私は返事を返すこともできない。
硬直している私を見下ろしながら、松本さんは極上の笑顔で言った。
「俺、明日から別の会社の担当になるからもう会えなくなるけど、元気でね。陽菜ちゃん」