主任は私を逃がさない
「言っておくがお前に選択権はない。もしこの勝負を辞退したら、さっきの写真を今すぐご両親へ送るぞ」
顔を離して、史郎くんはそんな意地悪なことを囁く。
まともに息もつけない状態になった私を眺めながらニヤリと笑った。
「その様子じゃ、もう勝負は決まったようなもんだな。負けを認めたらどうだ? ん?」
「な、なによそれ」
私はカチーンときて、彼を睨みつけた。
実は昔から“勝負”という言葉には敏感に反応してしまう。
それで今まで何度も史郎くんに乗せられて泣きをみてきたけれど、懲りたことは一度もない。
だって勝負を申し込まれてるのよ? 受けなきゃ女がすたるじゃない。
特に今回は引くわけにいかない。
だって私の人生と、女のプライドがかかっているんだもの。
「受けて立つわ。私、自分が大人の女だって証明してみせる。絶対に負けないから!」
「よし。大人の女に二言はないな?」
「無い!」
「よく言った。さあ、もう仕事に戻るぞ」
史郎くんは機嫌良さそうに私の背中をバンバン叩きながら、扉へと誘導する。
そしてクスッと小さく笑った。
「ほんと昔からチョロいよな。……そんなとこが可愛いんだよ。お前は」