主任は私を逃がさない
変わらない笑顔
「今日はいい天気ね。第一ラウンド日和ね」
「お前、普通にデート日和って言えよ」
史郎くんから勝負を申し込まれて、初めての週末。
史郎くんが指定した公園で待ち合わせをした私達は、約束の時間ピッタリに向き合ってこんな会話を交わしていた。
今日は私達の初デート。つまり勝負開始の第一ラウンドだ。
『まずはふたりで昼飯でも食わないか? デートとして妥当な線だろ?』
あの後、そんな風に史郎くんから初戦のお誘いを受けて、私は正々堂々と快諾した。
いいでしょう。受けて立ちましょう。私があなたの庇護なんか必要ないということを立派に証明してみせましょう。
この勝負は絶対に、勝つ自信があるんだから。
だって私が史郎くんに落とされるなんてあるわけない。
物心ついた時からずっと兄として慕ってきた相手に、恋愛感情なんか持つわけがないじゃない。
史郎くんは私と違って子どもの頃からモテまくってきたから、そういうところが無意識に己惚れてるのね。きっと。
やっぱり人間、多少の苦労は必要なんだわ。
女も人生もそうそう思い通りにはいかないんだってことを、これから私が史郎くんに教えてあげるんだ。