主任は私を逃がさない

「で、今日はどんなお店に連れて行ってくれるの?」

「それは着いてのお楽しみだ」


 公園を抜けて、背の高いイチョウ並木の横をふたり並んで歩きながら私は密かにほくそ笑んだ。

 どんなお店に連れて行かれたって大丈夫。準備は万端。

 なぜなら私には友恵という、頼もしいブレーンがついているんだから。


 史郎くんと勝負することになった経緯は、その日のうちに全て友恵に打ち明けていた。

 私が松本さんと付き合っていた期間は、ほんの一ヵ月程度。

 だから男女交際の経験値では、モテモテ男の史郎くんの方が圧倒的有利だろう。

 冷静に戦力分析した結果、友恵に協力してもらうのが一番だと自分なりに判断した。


『まだ初回だし、ランチだから、そんな気取ったお店なんかには連れて行かれないと思うけどね』


 そう言いながら友恵は、和・洋・中のテーブルマナーの基本を私にしっかり仕込んでくれた。

 それと、デートの際に相手に好印象を与えるコツなんかも色々と伝授してくれた。

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