主任は私を逃がさない
汗ふきタオルを首から下げているおじさん達からジロジロ見られて、肩身が狭くてたまらない。
そんな、珍獣を見つけたような目で見ないで欲しい。私だって想定外の事態なんだから。
四方八方から突き刺さる無遠慮な視線を見返す度胸もなく、せっかく友恵からもらったカラ元気もみるみる萎んでしまう。
恥ずかしくて心細くて、私は背中を丸めながら助けを求めるように史郎くんを見上げた。
でも彼は全く気にしてくれている様子もなく、無造作にメニューを差し出しながら聞いてくる。
「なに食べる?」
私は仕方なくメニューを受け取り、上からザッと眺めた。
そして、さらに落ち込んだ。
なにこの、『ニンニクどっさり美味スタミナ豚丼』とか、『ボリュームびっくり超豪華カツ丼』とかの痛々しいキャッチフレーズは。
いや、美味しそうだけど。文面通り素直に受け取れば、美味しそうではあるんだけど。
「なんでもいい。史郎くんが決めて」
すっかり食欲の失せてしまった私は、投げやりに言って史郎くんにメニューを戻した。
ところが史郎くんはそれを受け取らず、こっちに突き返してくる。
「自分で選べ」
「え?」
「自分が食う物くらい、責任もって自分で選べよ」