主任は私を逃がさない
アルコールとジェラシー

 ええと、あっちの人のグラスはまだ大丈夫そうね。

 でもこっちの人はそろそろ注いだ方がいいのかな?

 ビール瓶を持って会場内をグルグル回りながら、私はひたすら他人のグラスの残量をチェックしていた。


 今日はうちの会社と取引のあるメーカー主催の、キャンペーン決起大会。

 夕方からの集会が終わった後、ホテルの会場を借りた立食形式の親睦パーティーが行われている。

 関連会社のお偉いさんや営業マンが大勢参加している飲み会は、熱気も宴もたけなわ。

 アルコールの匂いと、上気した顔と、賑やかな笑い声が充満する会場内はピークを迎えている。

 うちの会社からは私も含めた新入社員の全員が、お酌人員として強制参加させられていた。


 今日の私のファッションはちょっと改まったスーツスタイル。

 明るいネイビーの膝丈フレアスカートは素材が軽くて、動くたびにヒラヒラと可愛らしい。

 アイボリーのジャケットは、ラウンドカットされた大きな襟と、飾りポケットの丸みがポイント。

 パンプスとショルダーバッグは飾り気が無くてシンプルだけど、それが逆にさり気ない高級感を醸し出している。

 お年を召したオジサマ方にも好印象の、大人可愛いスタイル。

 ……らしい。コーディネートしてくれた友恵によれば。

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