主任は私を逃がさない

「分かってないのは史郎くんよ! 私がどんな思いで決心したのか、全然分かっていない!」


 もう、いい。史郎くんとなんか話さない。

 私はもう大人なんだから、史郎くんの意見も、両親の意見も聞く必要はない。

 私は私がやりたいようにやらせてもらうんだ。


「私はこの恰好もやめないし、これから二次会にも行く!」

「陽菜!」

「放っておいてよ! 行くったら行くの!」


 史郎くんの腕の中でジタバタ暴れていたら、不意に顎をつかまれ、顔をグッと上向きにされた。

 思いがけないほどすぐ近くに史郎くんの顔がある。

 その怖いくらい真剣な目に飲まれた私は、騒ぐのを止めて彼の目を見つめ返した。


「そんなに酔いたいのか?」

「…………」

「じゃあ俺が酔わせてやる」


 瞬きする間も無い、次の瞬間。

 私の唇と史郎くんの唇が重なった。

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