主任は私を逃がさない

 初モノ? 最初から私を狙ってた?

 じゃあ明確なことは何も言わなかったのも、誰にも内緒だって釘を刺してたのも、全部そのため?


「後から面倒なことにならないように、前もって逃げ道を用意していたのよ。単純に大人同士の合意の行為だったってことにするために」

「そんな!」

「美味しく頂くだけ頂いて、すぐにポイ捨てするつもりだったのね」


 ……だから今日だったの?

 明日からの担当替えが決まったから、後腐れなくて好都合とばかりに今日実行したってこと?

 遊びの恋だったのかと思ったけれど、そもそも恋ですらなかった?

 私のバージンだけが目当てで、私に向けてくれた優しさも笑顔も、あれは全部偽物だったの?

 そんなの……そんなの……。


「ひどすぎる! うわあぁぁぁーー!」

「ちょ、人の耳元で大泣きしないでよ! クリームが飛んでくる!」

「友恵、さっきからひどい! 私は被害者なのに!」

「あたしだって本気でムカついてるわよ! 陽菜を餌食にした最低のクズカス野郎に!」


 友恵は泣いてる私をギュッと抱き寄せて、生クリームで悲惨なことになっている顔をティッシュで丁寧に拭いてくれた。

 口は悪いけど友情に厚くて、なにか相談するたびに自分のことのように親身になってくれる。

 そんな彼女の優しい本質を知っているからこそ、私はこれまでどんな話も打ち明けられてきたんだ。

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