主任は私を逃がさない
「いつかこんな目に遭うんじゃないかって心配してたわ。だからもっと世間や男に対して免疫つけろって、あんなに警告してたのに」
「だ、だって、私が男に縁がないのも、世間知らずなのも、わ、私の責任じゃないもの」
私はしゃくり上げながら反論した。
実は友恵の言う通り、私は男や世間というものに対して異様なほど免疫が無い。
そもそもうちの母方の家系が強烈な女系一族で、先祖代々、男に縁がない。
なぜかうちの親類縁者に生まれてくるのは、高確率で女児ばっかり。
珍しく男児が生まれても病気で早世したり、養子に出たり、海外へ出たりで家に居着かない。
おまけに未婚率もやたらと高くて、女ばかりが売れ残る。
長女が婿をもらうことで何とか続いてきた、呪われたように男を遠ざける宿命を持った血族だ。
それに加えて、私の両親は長い間不妊症に悩んでいた。
10年以上に渡る長く苦しい不妊治療に耐え続け、もう諦めかけた時に奇跡的に生まれた一粒種が私。
そんなわけだから、両親の溺愛ぶりたるやハンパ無かった。