約束は永遠に
サーシャもとい、リリィはとある侯爵の娘だった。

ディルは3つ上の父の仲のいい子爵の息子。
小さい頃はよく2人で互いの家の庭で遊んでいた。

兄と慕っていたリリィの心に恋心が芽生えたのは10歳を迎えた頃。
その頃からディルに冗談めいて、でも少し本気でディルに結婚の約束を告げていた。

ディルもリリィの言葉を受け入れてくれていた。
でもリリィは子供ながらも侯爵家の娘である事を自覚していたため、身分の低いディルとは結ばれないという事も分かっている。

いずれは親の決めた人と結婚しなければいけない事、そしてそれはディルではないという事。


それでも、その時はディルが自分の言葉を受け入れてくれる事がとても嬉しかった。
それだけで幸せだった。

月日が経ち、成人を迎えたディルはリリィと会うことが出来なくなった。
親が二人の約束を知っていたからなのか、それは分からない。

ディルも屋敷に来る事はなかったし、リリィもディルの屋敷へ行く事が出来なくなったのだ。
その頃からリリィには更に厳しく、淑女としてのマナーを躾けられていく。

リリィは悟る。

「ああ、もうすぐ私はどこかに嫁がされるのだ」と。

< 21 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop