約束は永遠に
女の名前は、サーシャ。

この町の住人は、サーシャと言う名前以外の素性を知らない。
聞いても答えないというのもあるが、敢えて誰も聞かないようにしている、と言うのが正解である。

サーシャは明るくサバサバした女性だった。誰にでも愛想がよくこの町の人気者だった。
だが、時折憂いの表情を見せる事があった。

その表情を見た者は皆、何かを悟る。
そして、彼女を傷つけまいと敢えて聞かないのであった。

今日も酒場の中は、仕事を終えた者達の愚痴や笑い声で賑やかだった。


「なあ、サーシャ聞いてくれよ。今日も大漁、最高売り上げだったんだ!だからよ、今日も大盤振る舞いでいくぜ!」

「そうやって、調子こいてると奥さんにやられるよ。大概にしときなね」

「サーシャ、酒ー!」

「はいよ!ってあんたもあんまり飲みすぎると、明日の漁がダメになるからほどほどにね!」

この酒場に来る者は殆どがこの町に住む常連ばかりだった。
毎日こんな調子で時間は過ぎていく。

サーシャは手際よく酒を作ると、頼まれた常連の一人に手渡す。
そして、サーシャもごくりと酒を飲むとまた、常連とのたわいのない話を続ける。

今日もこうやって一日が過ぎていくはずだった。

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